大腸がんは増えてきている身近な病気

今回は日本人で増えている大腸がんについて記載したいと思います。

大腸がんについて

大腸にできるがんを総称して大腸がんと呼びます。盲腸からS状結腸にかけて発生すると結腸がん、直腸から肛門にかけて発生すると直腸がん、肛門管がんと診断されます。

大腸がん発生の原因については完全に特定されたわけではありません。これまでは欧米人特有の病気と思われてきましたが、最近になって日本人の患者も急増(特に30代前半以上)してきており、罹患率(患者数)は1位死亡数は2位(男性では罹患数・死亡数共に3位、女性では罹患数2位・死亡数1位)です。食事の欧米化が進んだことが影響しているといわれています。

大腸の病気には、遺伝性の病気である家族性大腸腺腫症やリンチ症候群、炎症性の病気である潰瘍性大腸炎、クローン病などがあります。これらの病気がある人は、大腸がんが発生しやすい傾向にあります。

どうやって見つかるか?

大腸がんは健康診断や人間ドックでの便潜血検査で指摘され、発見される場合が多いです。

一般的に便潜血検査の陽性率は約5~10%(7%)で、その中で大腸がんが発見される確率は約2~3%と言われています。

言い換えると、

「自覚症状のない10,000人に便潜血検査を行うと、500人~1000人が陽性となり、

大腸内視鏡検査を行うと10人~30人に癌が見つかる」

ということです。決して低い確率ではありません。

便潜血検査陽性が指摘されたら、速やかに大腸内視鏡検査を行うことをお勧めします。

陽性が指摘された患者様がよく言われることとしては・・・

「何も症状がないから大腸がんではないと思う」

「昔から痔があるからそのせいだと思う」

「大腸内視鏡検査は辛いからやりたくない」

しかし記載したとおり大腸がんは年々増えており、進行がんになっても自覚症状がない方がほとんどです。

唯一、診断できる検査方法は大腸内視鏡検査しかありません。

血便、下痢や便秘の繰り返し、残便感、腹部膨満感、体重減少などの諸症状が現れてから発見される大腸がんでは進行がんに至っている可能性が高いわけです。

大腸がんのできやすい場所、症状

大鵬薬品工業様HPから転載

大腸は口側から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸S状部、上部直腸、下部直腸、肛門管に分かれています。肛門に近いS状結腸~直腸に発生する大腸がんが全体の約70%程度を占めています。

症状の出方は右側大腸(盲腸~横行結腸)と左側大腸(下行結腸~S状結腸)、直腸では違います。

右側結腸では比較的腸の内腔(通り道)が太く、便も液状であるため便通異常を自覚することは少ないです。肛門までの距離もあるため、血便を自覚することが少ない傾向があります。がんが大きくなると、腹部腫瘤(しこり)や出血による貧血が起きて、全身倦怠感が出始めてからようやく気づくこともあります。自覚症状がなく気づかれにくい場所です。

左側結腸ではがんが大きくなり腸の内腔が狭くなると、便が通過しにくくなり、便秘や間欠的な下痢などの便通異常がみられることがあります。また、さらにがんが大きくなると食べ物の通過が困難となり、腹痛腸閉塞のといった症状が現れる場合もあります。

直腸に発生したがんは肛門に近い部位であるため、血便で発見されることが多いです。特に、便に血液が付着して発見されることが多く、比較的鮮血に近い状態です。また、がんが大きくなり、直腸の内腔が狭くなると、便の狭小化や残便感などの症状が見られることもあります。

がんが進行していくと腸の壁に穴を開けてしまうため(穿孔)、便がお腹の中に漏れてしまい、腹膜炎という状態を来たします。緊急手術が必要な状態となり、一刻を争う生命に関わる事態となります。私もそのような多くの方を診察し手術もしてきました。大腸がんは年齢を問わず、本当に増えてきているのです。

大腸がんの治療

切除の方法には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の大きさや部位、肉眼で見た形(肉眼型)、予測されるがんの広がりの程度によって治療方法が決定されます。

①内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主に、キノコのような形に盛り上がった茎がある病変に対して行われます。内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、スネアを茎に掛けて病変を絞め付けて、高周波電流で焼き切ります。最近では高周波を用いないで、そのままスネアで切り取るコールドスネアポリペクトミーという方法も行われています。高周波電流で焼き切るよりも、出血や穿孔(穴が開くこと)の危険性が低いといわれていますが、適応は限られています。当クリニックで日帰り手術で対応可能な病変は、そのまま切除を行います。

②内視鏡的粘膜切除術(EMR)

病変に茎がなく、盛り上がりがなだらかな場合は、スネアが掛けにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入してから、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切り取ります。

当クリニックで日帰り手術で対応可能な病変は、そのまま切除を行います。

③内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

主にEMRで切除が困難な大きな病変に対しての治療法です。がんを浮きあがらせるために、病変の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入してから、病変の周りや下を電気メスで徐々に切開し、はぎ取る方法です。EMRに比較すると、治療に時間がかかります。また、出血や穿孔などの危険性も少し高くなります。

当院での対応は困難なため、専門治療のできる高次医療機関へのご紹介をいたします。

④外科的手術

内視鏡的に切除できない病変や周囲のリンパ節(がん細胞が転移していく中継地点)への転移が疑われる場合は、外科的な腸切除が必要となります。最近は腹腔鏡下手術が一般的になっていますが、病状や持病によっては開腹手術が必要となる場合もあります。

当院では外科的に専門治療可能な連携医療機関が多くありますが、その他の医療機関のご希望があればご紹介も可能です。

繰り返しますが、初期では自覚症状はありません。そのため早期で大腸がんを発見するには健康診断や人間ドックでの定期的な便潜血検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が非常に重要です。早期に見つかれば内視鏡治療や外科手術で治癒することが可能な病気ということができます。

検査を受けるハードルを低くできるように、当クリニックでは全力を尽くして対応させていただきます。