意外と?多くの方が悩まれているいぼ痔(内痔核)について
今朝のNHK、あさイチで痔の特集がされていました。
多くの方が悩まれている「いぼ痔」、その中で最も多い「内痔核」について記載します。
いぼ痔(内痔核)について
肛門の歯状線(直腸と肛門の境)より内側に生じた痔核のことを指します。
肛門周囲の血流が悪くなり、血管の一部にこぶ(静脈瘤)が出来てふくれあがった状態です。
痔疾患の中で男女共に50%以上の割合を占めているのが「内痔核」です。
40代~60代の中高年の方に多いといわれておりますが、老若男女問わず誰にでも起こりうる病気の一つですが、排便習慣や生活習慣が影響を及ぼす一種の生活習慣病と言っても過言ではありません。
初期の症状は出血する程度で、痛みをほとんど感じないまま進行します。
進行していき、痔核が大きくなると、脱出(脱肛)し、出血や痛みを伴うようになります。
私が勤務医の頃に、脱出した「いぼ痔」からの出血で血圧低下、呼吸苦などのショック状態で救急搬送され、緊急処置を行ってなんとか一命をとりとめたケースもありました。放置すると怖い病気でもあります。
しかしながら場所がお尻ということもあり、羞恥心で受診できない方が数多くおられるのも事実です。
どうして内痔核ができるのか?
内痔核のできる原因には様々な要因があります。
・ストレス(排便習慣が乱れ、便秘がちになります。免疫力低下による感染を起こしやすくなります。)
・塩辛い物、香辛料などの刺激物(排便時に肛門を傷つけます。)
・排便時の長時間のいきみ(いきむことで肛門周囲のこぶ=静脈瘤に悪影響を与えます。)
・同じ姿勢でのデスクワーク
(座位でも立位でも長時間同じ姿勢を続けることは、肛門付近のうっ血につながり、痔を引き起こします。)
・ゴルフやテニスなどの運動時のいきみ(いきむことで肛門への負担が高まります。)
・エアコンなどによる体の冷え(冷えによる肛門近くの血流うっ滞は要因となります。)
・喫煙・飲酒(喫煙による血管の収縮や飲酒による肛門近くの血流うっ滞は要因となります。)
・シャワーだけの風呂習慣
(入浴をすることで肛門が清潔に保たれるだけでなく、おしりが温まることで肛門部のうっ血が改善されます。入浴しないことで肛門部の血流が低下します。)
・妊娠・出産
(妊娠してお腹が大きくなると、血液が腹部に集中するため、排便習慣が乱れて便秘がちになります。免疫力低下による感染を起こしやすくなります。)
内痔核の分類 Goligher(ゴリガー)分類
内痔核はゴリガー分類で分けられています。
1度:排便時に肛門管内に膨らんでくる程度の痔核
2度:排便時に肛門外に脱出するものの、排便が済めば自然に戻る程度の痔核
3度:排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない痔核
4度:常に肛門外に脱出している痔核
内痔核の治療について
内痔核の診断がされると、手術という2文字が頭をよぎると思いますが、
まずは排便習慣の見直しや生活習慣の見直し、並行して薬物治療を行う事が重要です。
<排便習慣の見直し>
①一回の排便時間は3分~5分程度に
排便時に強くいきむ時間が長いと、肛門がうっ血してしまいます。特に残便感がある時に強くいきむと、肛門に強い圧力がかかってしまいます。1回の排便の時間は3分~5分程度(理想は3分以内)を目安とし、出ないときは無理をせず切り上げましょう。
②拭きすぎ、洗いすぎに注意
清潔に保つことは大事ですが、石鹼やボディーソープで肛門を洗いすぎると、逆に皮膚の正常なバリアー機構を壊してしまうので、洗いすぎは良くありません。また、水分の多い環境は細菌感染を助長するため、排便後はしっかり拭くことは大切ですが、乾燥させすぎると傷つきやすくなり注意が必要です。
<生活習慣の見直し>
①食物繊維をしっかり摂る
食物繊維は腸内で水分を吸収して膨らみ、便の量を増やして軟らかくし、腸の動きを高めますので便秘がちの方は意識して摂取してください。ただし、もともと下痢気味の方は脂肪分の少ない消化のよい食事をとりましょう。
②水分摂取は十分に行う
便秘解消や便を軟らかくすることにつながりますので、1日2Lぐらいの水分摂取を目安に心がけましょう。
③朝食を摂る習慣づけを
朝食を摂ることは胃腸の動きを活発にして決まった時間の便意を起こさせることに重要です。時間がない時は、水や牛乳を飲むだけでも効果がありますので、実践してください。
④アルコール類、香辛料などの刺激物を控える
肛門を刺激したり、うっ血させることは、痔の症状を悪化させる原因につながります。
<薬物治療>
排便習慣や生活習慣の見直しに加えて、炎症を抑える飲み薬や注入軟膏、緩下剤を併用し痔核の症状を緩和できるようにしていきます。
<手術治療>
一般的には2度以上の内痔核で手術を検討すると言われています。
4度の場合は手術を行わなければ治ることはありません。
①ジオン注射療法(ALTA療法)
内痔核に対する硬化療法の1つで、2005年から開始されたものです。痔核を切らずに治すという治療法で、1つの痔核につき、ジオン注射を4ヵ所に分割して行います。
これによって痔核に血液を流入するとされる血管を遮断することができ、次第に痔核は小さく、そして硬くなることで直腸粘膜部に癒着、固定されるようになって脱出できない状態になるという治療法です。
この注射療法の登場によって、これまで手術による切除でしか選択肢がなかった内痔核であっても切らずに治せるようになりました。なお施術時は、肛門の痛みを感じない部分に注射いたします。このように痛みや出血がみられることは少ないので、日帰りによる治療が可能です。
なおジオン注射は、全体の10%程度の方に再発することがあります。
副作用としては
- 発熱症状:3%程度(2週間以内に起こることが多いですが、一時的なものです)
- 血圧低下:2%程度
- 肛門周囲痛:1%程度
透析されている方、痔核嵌頓を起こしている方、妊娠中の方、授乳されている方には適応はありません。
②結紮切除術
内痔核に対して行われるもので、脱出している痔核に血液を送っている血管を縛りあげ、痔核の根元から切除していきます。ジオン注射に比べれば痛みがあるため、当院では主にジオン注射療法と併用して行います。術後の出血や肛門が狭くなる(狭窄)といった合併症があります。
他にもゴム輪結紮法やPPH法などありますが、当クリニックでは①や②を併用した治療を用いて、患者様にとって一番の治療方法を提案させていただきます。
手術時の麻酔もなるべく痛みが少なく受けていただけるように、仙骨硬膜外ブロック注射を用いた日帰り肛門外科手術を行っております。
<最後に>
お尻の症状で悩まれている方は前述しました通り本当に多くいらっしゃいます。
また、お尻の病気は大腸癌や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などと密接な関連があり、専門医の診察を受けなければ分からないことも多くあります。
気になることがありましたら、恥ずかしがらず、勇気を出して当クリニックへご相談ください。
詳細は当クリニックホームページをご参照ください