小児へのコロナウィルスワクチン接種について

<小児への接種(5歳~11歳)について>

皆様が気にされている小児への接種も開始となりました。

現時点ではファイザー社製ワクチンのみが接種適応となっております。

小児用新型コロナワクチンでは、1回目の接種時の年齢に基づいて判断します。

1回目の接種時に11歳だったお子様が、2回目の接種時までに12歳の誕生日を迎えた場合、2回目接種にも1回目と同じ小児用ワクチンを使用します。接種時の年齢にはご注意ください。

小児のCOVID19について

全世界的に見ても、COVID-19による小児、青年、若年成人の感染者数と死亡者数は、成人と比較して少ない状況です。2019年12月30日から2021年9月6日までにWHOに報告された年齢別の症例データに基づくと、世界の感染者数は、年齢区分に比例して増加しています。24歳までの年齢区分では、5歳未満の小児の割合が最も少なく、思春期(15~19歳)と若年成人(20~24歳)を合わせた年齢区分では、世界全体の患者数に占める割合が最も多くなりました。同年齢区分の死亡者数は、全世界の死亡者数に占める割合が0.5%未満でした。

年齢区分累計感染者数全体の割合累計死亡者数全体の割合
5歳未満1,599,073人1.8%1,704人0.1%
5~14歳5,622,295人6.2%1,218人0.1%
15~24歳13,071,320人14.3%6,327人0.4%

通常、5歳未満の小児、年長児(5~9歳)および青年(10~19歳)は、25歳以上の成人と比較してSARS-CoV-2感染による症状が少なく、軽度であり、重度の症状を発症する可能性は低い状況です。これらの年齢区分では、症状が軽く、無症状であることから、医療機関を受診する頻度が低くなることで検査頻度が低くなり、報告されないケースも発生します。初期の報告では、重症化のリスクは年齢に依存しており、1歳未満では重症化しやすいことが示唆されていましたが、いくつかの文献では、新生児(生後28日目以内)の患者は、他の小児患者と比較して軽度であることが示されています。さらに、現在の文献では、年齢別の集計は体系的に行われておらず、これらの研究結果は、パンデミックの時期や入院患者に重点を置いた内容など、状況に応じた報告となっています。

小児や青年は、長期にわたる臨床症状(COVID-19後の状態、もしくはSARS-CoV-2感染後の急性後遺症)を経験するという報告もありますが、その頻度や特徴についてはまだ調査中です。

ワクチンに期待される効果

オミクロン株が流行する以前の検討結果ですが、海外で5~11歳用のワクチンによる臨床試験の成績が報告されてきております。ワクチン接種群とプラセボ群(ワクチンを接種していない人)を観察した結果、2回目接種後7日以降で約90%の発症予防効果が確認されました。12歳以上の者に匹敵する有効率で、病気の発症を予防する効果が期待されます。

2回接種後の血液中の新型コロナウイルスに対する中和抗体価や抗体応答率(=抗体価がベースライン値(1回目接種前)から4倍以上に上昇した被験者の数)についても、別の臨床試験で有効性が確認されている16~25歳におけるワクチン接種後の中和抗体価や抗体応答率と比較して劣っていないことが示されています。

つまり、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できるとされています

ワクチンによる副反応

5~11歳の接種においても、12歳以上の者と同様に、ワクチンを接種した部位の痛みや倦怠感、頭痛、発熱など、様々な症状が臨床試験で報告されていますが、ほとんどが軽症から中等症で回復しており、現時点で得られる情報からは、安全性に重大な懸念は認められないと判断されます。

また、異なる臨床研究では、接種後の発熱などの副反応は、12歳以上の者と比べて低いと報告されています。ファイザー社製のワクチンはmRNAワクチンに分類されますが、mRNAワクチン の接種後に若年者で注意すべき副反応として心筋炎/心膜炎があります。特に男性で、1回目接種よりも2回目接種後に、よりリスクが高いとされていますが、米国での解析結果によると、5~11歳の男児における2回目接種後の心筋炎/心膜炎の報告頻度は、12~15歳及び16~17歳の男性と比較して低かったことが確認されています。

現時点では、5~11歳の子供で心筋炎/心膜炎の副反応のリスクがより高いということはありません。

ワクチンを受けるメリット

前述したように小児のコロナウィルス罹患による症状は軽度であると述べましたが、下記のような病態が発症することが世界的に報告されています。

「小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C))」は、心臓など多臓器 に影響が及ぶ重篤な病態です。新型コロナウイルスに感染した後、数週間以上を経て発症します。患者数の多い海外では半数以上に集中治療室での治療が必要で、死亡例もあります。

米国に比べ、日本での発症者数ははるかに少ないですが、オミクロン株による小児の感染者数の増加に伴い、今後、MIS-Cの患者が増加する可能性があります。
12~18歳を対象に検討した成績ですが、米国においてワクチンの接種はその予防に効果があると報告されており、MIS-Cの予防が期待できます。

小児多系統炎症性症候群?

下痢、発熱、発疹などがみられ、心臓の動きが悪くなることが特徴です。新型コロナウイルスに感染した回復期(2-6週後)に学童期以降の小児にこのような症状が認められる傾向があります。川崎病と症状は似ていますが、川崎病とMIS-Cは、長引く発熱、皮膚の発疹、リンパ節腫脹、下痢、炎症性バイオマーカーの上昇など、いくつかの共通の症状を持っていますが、MIS-Cは10代と発症年齢が高いこと、腹部症状が多いこと、左室収縮機能障害や急性心不全を伴う症例が多いことなどの特徴がありますが、日本での報告は非常に稀のようです。

小児への接種まとめ

まだ情報の蓄積が不十分なところもあり、接種するメリットデメリットを検討の上で慎重な判断が必要と思われます。接種される判断は親となるため、話し合える年齢であればお子さんと十分に相談の上で接種されることを希望します。