おしりを見せるのは恥ずかしい、手術は怖いもの…というイメージの払拭をめざして
おしりの症状で悩まれている方は、「3人に1人いる」と言われ、決して珍しい病気ではありません。
多くの方はデリケートな部分なだけになかなか打ち明けにくいということもあるかもしれませんが、専門医の治療を受けることで快適なおしり生活を過ごすことができます。
「おしりの事で悩んでいるのはあなただけではありません」
恥ずかしがらず、勇気を出してご相談ください。
肛門外科で扱う代表的な疾患
いぼ痔(内痔核、外痔核)、嵌頓痔核、あな痔(痔瘻、痔ろう)、肛門周囲膿瘍、きれ痔(裂肛)、肛門ポリープ、直腸瘤、直腸粘膜脱、直腸脱、尖圭コンジローマなどがあります。
当クリニックでは投薬のみの治療だけでなく、「日帰り手術」を組み合わせることで、皆様の快適なおしり生活をサポートします。
下記のような方は当クリニックでの肛門外科診察をおすすめします
- 排便時の痛み、お尻の痛み
- お尻から血が出る、お尻から膿が出る
- お尻が腫れる、お尻にできものがある
- お尻のかゆみ
- 排便時の違和感
- 便が細い
- 便秘、下痢が続いている、繰り返される
主な肛門疾患
いぼ痔(内痔核、外痔核)
痔核とは
様々なタイプのある痔の疾患の中で、最も多くの方が悩まされている病気です。肛門付近の血流が悪くなることでうっ血をきたし、静脈がこぶ状に膨らんでしまった状態が痔核です。
内痔核について
肛門の歯状線(直腸と肛門の境)より内側に生じた痔核です。初期の症状は出血する程度で、痛みをほとんど感じないまま進行します。進行していき、痔核が大きくなると、脱出(脱肛)するようになります。初めのうちは脱出をしていても指で押し込めば戻りますが、さらに進行すると戻らなくなり、痛みが伴うこともあります。内痔核は進行具合に応じて、以下のように4つのタイプに分類されます。
内痔核の分類(「ゴリガー分類」による)
- 1度:排便時に肛門管内に膨らんでくる程度の痔核
- 2度:排便時に肛門外に脱出するものの、排便が済めば自然に戻る程度の痔核
- 3度:排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない痔核
- 4度:常に肛門外に脱出している痔核
※通常は「2度」以上で、手術の適応になります。
外痔核について
肛門の歯状線の外側に生じた痔核です。激しい運動をしたり、急に重いものを持ったりした後などに突然血の塊が肛門に生じて、腫れて痛みます。下痢や便秘、飲酒や冷えが原因となることもあります。
ほとんどの場合は、内痔核と同様に薬物療法で改善しますが、症状が長引く、繰り返す場合や大きくて痛みが強いものは切除する必要があります。
痔核の治療について
まずは排便習慣の見直し、生活習慣の是正を徹底します。注入軟膏などの外用薬、内服薬で治療を行い、改善が見られない場合、繰り返す場合、痛みや出血が強い場合は手術が必要となります。
当クリニックで可能な痔核手術について
あな痔(痔瘻、痔ろう)
痔瘻とは
直腸周囲膿瘍、肛門周囲膿瘍(直腸・肛門部とその周辺の皮下、粘膜下、筋間などに膿が溜まった状態)が自潰(さけてはじけること)して瘻管(トンネルのようなもの)ができた症状をいいます。
- 一次口:肛門の中で、細菌が入り込む穴のことをいい、肛門小窩(肛門腺の開口部)にあたります。
- 二次口:皮膚から膿が出ている穴をいいます。
一次口と二次口の間のトンネルをろう管(瘻管)といいます。
病状によって、皮下痔瘻(1型)、筋間痔瘻(2型)、坐骨直腸窩痔瘻(3型)、骨盤直腸窩痔瘻(4型)に分類されますが、それぞれがさらに細分化しています。
手術療法について
痔瘻は薬では治らず、化膿を繰り返すことで複雑化したり、がん化することもありますので手術が必要です。痔瘻の入り口である一次口の切除と感染の原因となった原発巣(肛門腺)の切除、そして適切なドレナージ(膿や浸出液などの排液が通る逃げ道)の作成が重要です。
炎症が強く痛みが強い場合には、まずは切開をして膿を出し、炎症がおさまってから根治手術を行う事もあります。
日帰り手術が適切かどうか丁寧に診察したうえで判断いたします。
入院による手術が必要となった場合は、適切な医療機関を紹介いたします。
当クリニックで可能な痔瘻手術について
肛門周囲膿瘍
肛門の奥から細菌が入って、肛門周囲が化膿したものです。痛みが強く、膿が多くなると熱も出てきます。肛門周囲膿瘍が切開でおさまり、肛門の奥と交通した管となったものが痔瘻です。切開し膿を出すことが治療の基本です。
きれ痔(裂肛)
裂肛とは
肛門上皮が便秘や下痢が原因で切れてしまい、痛みや出血を伴ったものです。
- 急性裂肛:傷が浅く、排便時に出血や痛みが生じるものの数日で回復するものです。
- 慢性裂肛:裂肛を繰り返すことで傷が深くなることで、潰瘍になるものです。痛みが持続することで、傷の内側に肛門ポリープ、外側に見張りイボを形成することがあります。
裂肛の治療について
痔核と同様に保存治療が第一です。
排便習慣の見直しや薬物療法を行っても、治癒されない慢性裂肛やきれ痔の繰り返しにより肛門自体が狭くなってしまった場合(肛門狭窄)に手術を行います。
当クリニックで可能な裂肛手術について
軽度であれば裂肛の原因と言われている肛門括約筋を一部切除します。重度と診断された場合は、裂肛が原因で発生した肛門ポリープや見張りイボなども切除します。また、肛門の狭窄が進んでいる場合は、切除部分に皮膚を移植します。
直腸瘤
直腸瘤とは
直腸瘤とは、女性特有の病気であり、排便時のいきみで直腸に圧が加わると、直腸の前側が腟の中に向かって膨らんでくる状態です。原因としては加齢、出産、排便時のいきみ、慢性気管支炎による咳、重たいものを運ぶ習慣などがあります。
排便困難が主な症状で、残便感、腟の違和感、会陰部の重苦しさといった症状が現れます。
腟の中に指を入れて押さえると排便しやすいというのは、直腸瘤に特徴的な症状です。
自覚症状の有無に応じて治療をするべきか決定します。日常生活に支障がない場合には、排便習慣を整えて、骨盤の筋肉を鍛えて経過観察となることもあります。それでも改善が見られない場合は手術を検討します。
直腸粘膜脱
排便時間の長さや排便時のいきみにより、下部直腸の粘膜が肛門から脱出する状態です。
症状としては内痔核、脱肛に伴う症状と同様で、肛門鏡の挿入による観察や、粘膜の脱出を認めることで診断ができます。
治療としては排便習慣の改善が第一です。十分な治療効果が現れない場合は、痔核根治術に準じて、粘膜切除術を行ったり、ジオン注射(ALTA療法)を用いた硬化療法を行ったりします。
直腸脱
直腸が肛門から脱出した状態です。直腸脱では直腸が裏返しになるため、直腸の粘膜が赤黒くなり、湿った指状の突起として肛門から体外に突き出て見えます。出血や便失禁が起こります。突出の程度を判断するために、立位か屈んだ状態でいきんでもらって肛門部を調べます。肛門括約筋の触診を行うと、筋肉の緊張が低下していることが分かります。手術加療が必要です。